郊外型パッシブモデル “吉見の家”
普遍的な魅力をもった住宅についての答えそれは・・・。
年月を経ることで魅力の高まる素材で造ること。
長期間の使用に耐えうる構造的な能力を備えること。
住まい手の変化するニーズに対応できる柔軟性を持たせること。
省エネルギーで快適を感じる住環境とすること。
パッシブな家を目指して
2011年7月パッシブエナジーパスメゾット研究会にて、太陽や風を効果的に利用することで快適な住環境の実現を目指す設計手法と出会いました。それは夏と冬とでの太陽軌道の違いや、季節による風向きや風速、外気温や自然湿度の変化といった、地域毎の気候特性を把握する事で暮らしの中で消費されるエネルギーを最小化しつつ、快適感を最大化する事を目的としており、『パッシブデザイン』と呼びます。
これまでの設計と比べると、科学的データに基づきより論理的な計画が可能となりました。吉見の家では、夏の日差しを遮り冬の日差しを取り込む窓と庇の計画、自然風や温度差換気を利用した排熱計画、躯体の断熱性能や蓄熱性能、昼光利用、これらを行いやすくする為の建物配置を検討しています。
高気密高断熱性能にパッシブデザインを組み合わせること、自然派省エネ住宅のフラグシップモデルを目指しています。
夏の暑さ対策と冬の寒さ対策、どちらを優先するか。
平均外気温の推移と冷暖房運転状況の関係を整理してみました。
図からもわかるように暖房に必要となるエネルギーの方が冷房に使われるエネルギーよりも大きそうです。『住宅消費エネルギー』について調べてみると、冷房に使われるエネルギ−は暖房の10分の1以下だと判ります。
吉見の家では、暖房に有利な建物計画としました。
※平均外気温は気象庁HP『過去の気象データ:熊谷2014年データ』を参照しています。
気象庁 過去の気象データ検索http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.php
経済産業省 家庭のエネルギー消費の実態http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/actual
太陽の動きに着目する。
季節毎の太陽軌道を確認してみましょう。
冬至の太陽は真東よりやや南側から昇り始め真西よりやや南側に沈み、南中時の高度は低くくなります。一方で夏至の太陽は真東より北側から昇り、真西より北側へ沈みます。南中時の高度は冬至にくらべかなり高い事が判ります。
太陽が何時どの位置にあるか知る事で、取込みたい季節・時間・方位を検討します。
太陽光線の運び込む熱は時間によって変化する?
冬至、夏至、春分及び秋分の日射量を把握しておくことも大事です。夏至には、南面に比べて東・西面の日射量が多く、朝日と西日対策が特に重要です。また、水平面(屋根面)の熱量も大きく屋根の断熱が室温を下げる効果が大きそうです。
冬至には、南面の日射量が大きい事が判ります。南側の窓から太陽の熱を取り込む事で室温をあげる効果が期待できそうです。
省エネルギーな暮らしのためには南面に大きな窓を配置し、西・東の窓は最小限にするのが良いと考えられます。
日射量データベース閲覧システムhttp://app7.infoc.nedo.go.jp/metpv/metpv.html
庇の効果を高める工夫を。 夏至と冬至の太陽高度差を上手く利用することで、冬には太陽の熱を取り込み、夏は遮ることができます。また、建物を南面させることで庇によるコントロールが行いやすくなります。
日照シミュレーション
3Dプログラムを利用することで、日照状況を確認できます。
夏至や冬至の日照のみではなく、〇月△日の□時の日陰を再現できるため春や秋の明るさもイメージしやすくなります。
ライフスタイルに合わせて可変する間取り。住み継いでゆけるよう耐震性能や耐久性能、断熱性能を高めておく。
手づくりにこだわりました
自分たちの暮らす家について夫婦で話し合ったことを思い起こしてみると、それは普遍的な魅力の探求でした。本当に必要か、いつか飽きてしまうような一時の流行では...と繰り返し考えました。
自然とプランはシンプルな形にまとまり、無垢の木や漆喰、金属やタイル、和紙や生成りの布地といった自然素材中心のインテリアとなりました。
シンプルな家だからこそ職人の“手しごと”が引き立つように感じます。職人の仕事に対する感謝の気持ちと我が家に対する愛着を深めつつ暮らしてゆくのが楽しみです。
(吉見の家は小林自邸となっています。ご見学ご希望の方は小林までお声がけください。)
所在地 | 埼玉県比企郡吉見町 |
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最寄の交通機関 | 東松山駅より 車利用約18分 吹上駅より 車利用約10分 |
最後に
小さな頃、北の国からで黒岩五郎さんが暮らす手づくりの家に憧れたのを覚えています。
美しくも厳しい自然と共にあり、家族のふれあいが心を温めてくれる。私の中にある豊かな暮らしの原点であり、無垢の梁や床材の肌触り、手仕事を感じられるしつらえ、紅葉や夕焼けといった自然界の美しさに魅かれる所以です。
豊かさの捉え方は人それぞれです。これから住まいづくりを考えられている皆様、豊かな暮らしについてじっくりと考えてみて下さい。家族が楽しく毎日を過ごせるよう、前向きに人生を歩いてゆけるよう、イメージを膨らませましょう。
家づくりには生き方を良い方向へ導く可能性があると信じ、家づくりの技術を磨いてゆこうと思います。